前の記事で「外壁を張っても、水は入ります」と書きました。これは施工不良ではなく、はじめからそういうつくりだという話です。
では、水はどこから入るのか。
施工歴16年の外壁職人として、現場で一番気をつけている場所を書きます。張る側から見て「ここは弱い」と分かっている場所があります。
そして、入った水がどうなるか。うまく抜けるケースと、雨漏りになるケースの違いも書きます。
一番多いのは「サッシの上」
これは断言できます。雨が入りやすい場所の一番は、窓の上です。
なかでも多いのが吐き出し窓(掃き出し窓)の上。ベランダや庭に出る、下まで開いている大きな窓です。
なぜ吐き出しの上なのか
雨が溜まりやすくて、流れにくいからです。
窓の上は水平になります。そこに雨が当たると、流れ落ちずにその場に留まりやすい。吐き出し窓は幅が広いので、留まる量も多くなります。
そして、溜まった水が抜けきれないと何が起きるか。
防水テープが爆発します。
私たちはそう呼んでいます。サッシまわりに貼ってある防水テープが、溜まった水に押されて浮いたり剥がれたりして、そこから中に入ってしまうんです。
一度こうなると、水は防水紙の内側へ回ります。
いまの現場でやっている対策
同じことが起きないように、現場では手を入れています。
① 防水テープを5mm上げる
サッシの上ぴったりに貼るのではなく、吐き出しの上から5mm上げて貼ります。
② 紙も5mm切る
防水紙(透湿防水シート)も、あわせて5mm切っておきます。
この2つで何をしているかというと、水が溜まらないように、逃げ道をつくっているんです。ぴったり塞いでしまうと、入った水がそこで行き止まりになる。だから、あえて抜けるようにしておく。
「防水なのに切るの?」と思うかもしれません。でも、ここが外壁の防水で一番大事な考え方です。
雨は、絶対に溜めてはいけません。必ず流れるようにする。
塞ぐことが防水ではないんです。塞ぐ発想だと、かえって水を溜めてしまう。溜まった水は、いつか必ずどこかを壊して中に入ります。
入った水が流れて、外に出ていく道をつくる。それが外壁の防水です。
③ 割り付けを工夫する
外壁材のジョイント(継ぎ目)が、窓の上に来ないように割り付けます。
継ぎ目は水が入りやすい場所です。それを、もともと弱い窓の上に持ってこない。重ならないようにずらします。
これは図面には出てこない、現場の判断です。
下地から外れた釘
もうひとつが釘です。
外壁材は、下地の柱や胴縁に向けて釘やビスを打ちます。きちんと狙って打っていれば、外れることは通常ありません。
つまり、外れているとしたら——単に外してしまっているということです。納まりの都合でも、避けられないことでもありません。打ち手の問題です。
ここは正直に書きます。職人側のミスです。
外れた釘は効いていません。そして、その穴が水の入り口になります。
厄介なのは、この部分が断熱材で隠れてしまうことです。表からは見えません。外れた釘から水が入っていても、気づかないまま何年も経っていることがあり得ます。
見えなくなるからこそ、張るときに気をつけるしかない。ここは施主さんにはどうしようもない部分なので、業者や職人がちゃんとやるかどうかにかかっています。
破風・軒天まわり
意外に思われるかもしれませんが、屋根まわりからも入ります。
ここは「雨仕舞い(あまじまい)」の問題です。水がどう流れて、どこから出ていくか。その道筋の設計が甘いと、思わぬところから回ってきます。
板金が小さい
納めている板金が小さいと、雨を受けきれずに回り込みます。寸法にゆとりがないと、風の強い日に水が越えてきます。
有孔板からの吸い込み
軒天やケラバには、換気のために穴の空いた板(有孔板)が張られていることがあります。
穴が空いている以上、条件が悪ければそこから雨が入る可能性があります。
片流れ屋根の頂点
ここは建物の形によります。
分かりやすいのが片流れ屋根——一方向にだけ傾いている屋根の家です。その頂点(高い側の端)に軒天が張ってある場合、そこのコーキングが切れると、かなりの量が入ってきます。
高い場所なので普段は見えませんし、点検もされにくい場所です。切れ方によっては、想像以上に入ります。
片流れの家に住んでいる方は、頭の片隅に置いておいてください。
入った水はどうなるのか
ここが今日の記事で一番大事なところです。
防水紙で止まれば、問題ありません
外壁の裏に入った水は、防水紙の表面を伝って下に流れます。そして最終的に、外壁の一番下にある水切りから外に出ます。
この流れができていれば、水が入っても問題は起きません。前の記事で書いた「外壁は何層かで守る仕組み」というのは、こういうことです。
抜けないと、途端に厄介になります
問題は、うまく抜けてくれなかったときです。
雨漏りが起きたとき、どこから入っているのかを見つけるのが、ものすごく大変なんです。
理由はひとつ。水が漏れている場所と、入っている場所が近いとは限らないからです。
全然違うところから入った水が、壁の中を伝って、思いもよらない動線で別の場所から出てくる。こういう事例は本当に多いです。
天井にシミが出たからといって、その真上に穴が空いているとは限りません。何メートルも離れた場所から入って、梁や柱を伝って、そこまで来ていることがあります。
だから雨漏りの調査は時間がかかりますし、一度で原因を特定できないこともあります。「直したのにまた漏れた」という話をよく聞くのは、これが理由です。
施主として知っておいてほしいこと
専門的な話をしてきましたが、施主さんにお願いしたいのは2つだけです。
① 雨漏りは、早く言ってください
シミを見つけたら、様子を見ずに連絡してください。放置するほど、水が回る範囲が広がって、原因の特定が難しくなります。
②「ここが原因です」と即答する業者は疑ってください
さきほど書いたとおり、雨漏りの侵入口を特定するのは簡単ではありません。
見ただけですぐ「ここですね」と言い切る業者より、「調べさせてください」「何パターンか可能性があります」と言う業者の方が、実際は誠実だと思います。
まとめ
| 場所 | なぜ弱いか |
|---|---|
| サッシの上(特に吐き出し窓) | 水が溜まって流れにくい。防水テープが押されて剥がれる |
| 下地から外れた釘 | 打ち損じ。穴が水の入り口になり、断熱材で隠れて見えない |
| 破風・軒天まわり | 板金が小さい、有孔板の穴、片流れの頂点のコーキング切れ |
そして、入った水は——
- 防水紙で止まって水切りから抜ければ、問題なし
- 抜けなければ、原因の特定が非常に困難
外壁は「水を入れない」ものではありません。「入った水を溜めずに、外に出す」ものです。
雨は絶対に溜めない。必ず流す。職人として一番気をつけているのは、結局ここに尽きます。
この考え方が分かると、なぜ通気層があるのか、なぜ防水紙が一番大事なのかも見えてくると思います。
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この記事を書いた人:新築外壁施工歴16年の職人。ALCとサイディングを専門に、年間180棟以上の現場で施工管理を担当。
