バルコニーの天端は、こう納めています【笠木の下でやっていること】

5. 職人コラム

「バルコニーは雨漏りしやすい」

よく言われることだと思います。実際、そういう記事もたくさんあります。

では、現場では何をしているのか。

施工歴16年の外壁職人として、バルコニーの天端(てんば)で、私たちが実際にやっている処理を書きます。

先に結論を言っておくと——バルコニー自体は、そこまで危ない場所ではありません。ただし、ちゃんと納めていればの話です。


まず、誰の仕事なのか

バルコニーまわりは、いくつかの業者が関わります。ここを分けておかないと話が分かりにくいので、先に整理します。

部分担当
手すり壁の外壁外壁屋(私たち)
天端の防水下地外壁屋
笠木の仕上げ笠木屋さん
床の防水防水屋さん(FRP防水など)

私たちがやるのは、笠木の「下」です

笠木の仕上げは、笠木屋さんの仕事です。私たちは触りません。

床の防水も防水屋さんの仕事です。

外壁屋がやるのは、手すり壁の外壁と、天端の防水下地。つまり——仕上げで隠れてしまう部分です。

だからこそ、そこをどう納めているかは、完成後には誰にも見えません。


天端の処理:実際の手順

ここが、この記事の中心です。

今の現場でやっている処理を、順番に書きます。専門的になりますが、これだけの手数がかかっているということを知ってもらえたらと思います。

バルコニー手すり壁の天端の納まり図。天端のつらで紙を切り、両面ブチルテープ、水切りシート、ストレッチテープ、紙の順に処理し、その上に笠木が載る
天端の処理。この工程は全部、笠木の下に隠れます

① 天端のつらで、表と裏の紙を切る

まず、天端の面(つら)で、表と裏の防水紙を切ります。

手すり壁は、外側にも内側にも壁があります。その両方の紙を、天端の高さで揃えて切る。

② 幅広の両面ブチルテープを張る

切った天端の上に、幅の広い両面ブチルテープを張ります。

ブチルテープは、粘着力の強い防水用のテープです。ここで天端全体を押さえます。

③ 剥離紙を剥がして、水切りシートを被せる

テープの剥離紙を剥がしたら、その上に水切りシートを被せます。

天端は、これで仕上げです。この上に紙は張りません。

両面テープなので、シートがそのまま密着します。これで天端の上が一枚でつながった状態になります。

④ 壁の取り合いを、ストレッチテープで処理

次に、壁との取り合いを処理します。

ここにはデュポンのストレッチテープを使います。伸びるテープで、入隅専用のものがあります。

⑤ 本体の壁の紙を張る

ここまでが天端の処理です。そのあと、本体の壁の紙を張っていきます。

このとき、④のストレッチテープの上に、壁の紙が重なります。

順番が逆だと意味がありません。上から流れてきた水が、紙の表面を伝ってテープの上を通り過ぎる——そうなるように重ねます。

防水は、どちらが上に来るかで決まります。材料が同じでも、重ね方が逆なら 水は中に入ってしまう。地味ですが、ここは大事なところです。

あとは笠木屋さんが仕上げの笠木を被せて、完成です。


一番気をつけるのは、壁との取り合いです

今の5工程の中で、どこが一番大事か。

壁との取り合いです。

なぜそこなのか

天端の平らな部分は、テープとシートで押さえれば済みます。面で処理できるからです。

でも壁とぶつかるところは、面ではなく「角」です。しかも入隅と出隅が組み合わさる。

角は、普通のテープだと素直に張れません。浮いたり、シワが寄ったりする。

だから入隅専用のストレッチテープを使うと、きれいに納められます。専用の部材があるということは、それだけそこが大事な場所だということでもあります。

以前「ベランダ・下屋と外壁の取り合い」という記事で、取り合いは職人の腕が一番出ると書きました。天端も同じです。


雨漏りしやすいのは、2か所です

笠木まわりで水が入るとしたら、場所は限られています。

  • ジョイント(笠木と笠木のつなぎ目)
  • 壁との取り合い

この2つです。

ジョイント

笠木は長い部材なので、途中でつながります。そのつなぎ目が弱点になります。

ここは笠木屋さんの仕事なので、私から詳しいことは言えません。ただ、つなぎ目が弱点になるのは、外壁も屋根も同じです。

壁との取り合い

そしてもう一度、壁との取り合いです。

下地でも仕上げでも、結局ここが一番の弱点になります。だから手間をかけて処理します。


実は、バルコニー自体はそんなに危なくありません

ここは、意外に思われるかもしれません。

「バルコニー自体で、この納まりは良くない」と思うことは、あまりありません。

理由:凝った作りにする人が少ないから

そもそも——バルコニーを凝った作りにする人が、あまりいないんです。

だいたい四角い箱の形で、手すり壁があって、笠木が載る。形が単純なので、納まりも素直になります。

複雑な形にすれば取り合いが増えて危なくなりますが、バルコニーでそこまでやる家は少ないのが実際です。

危ないのは、むしろ「まわり」です

では何が問題になるか。

バルコニーそのものより、その付近の納まりです。

たとえば——

  • 手すりとサッシが近すぎて、納まりが良くない
  • 壁の納まりが複雑で、そのしわ寄せが来る

他の部分の影響で、バルコニーまわりが悪くなることはあると思います。

バルコニーが原因というより、設計の都合が集まってしまう場所だ、という言い方が近いかもしれません。

これは以前「図面では分からない外壁の落とし穴」で書いた話とつながります。図面の上では成立していても、現物では余裕がないということが起きます。


施主さんへ:完成後に見るところは、ありません

正直に書きます。

完成後に、施主さんが確認できることは特にありません。

笠木が付けば、ほぼ入りません

仕上げの笠木が付いてしまえば、天端から水が入ることは、ほぼありません。

中がどうなっているかは見えませんし、見えないなりにちゃんと処理されていれば問題は起きない。そういう場所です。

「バルコニーは雨漏りしやすいから心配」と思っている方がいたら、そこまで身構えなくて大丈夫だと思います。

見られるのは、工事中だけです

ただし——見るなら工事中しかありません。

以前「外壁の裏側はどうなっているか」で書いたのと同じで、紙が張られている段階が唯一の機会です。

もし現場に行く機会があれば、バルコニーの天端まわりにテープがしっかり貼られているか、見てみてください。難しい判断は要りません。丁寧に処理してあるかどうかは、素人目にも雰囲気で分かります。


まとめ

項目内容
笠木の仕上げ笠木屋さんの仕事(外壁屋は触らない)
床の防水防水屋さんの仕事
外壁屋がやるのは手すり壁の外壁と、天端の防水下地
天端の手順紙を切る → 両面ブチルテープ → 水切りシートで仕上げ。壁との取り合いはストレッチテープ
一番大事なところ壁との取り合い
雨が入るとしたらジョイントと壁の取り合い
バルコニー自体形が単純なので、そこまで危なくない
むしろ危ないのは手すりとサッシが近いなど、まわりの納まり
完成後の確認特にありません。笠木が付けばほぼ入らない

バルコニーの天端は、手数のかかる場所です。テープを貼って、シートを被せて、角を処理して、また紙を張る。

でもそれは全部、笠木の下に隠れます。

誰にも見えない場所に、これだけの工程がある。外壁の仕事は、だいたいそういうものです。


あわせて読みたい


この記事を書いた人:新築外壁施工歴16年の職人。ALCとサイディングを専門に、年間180棟以上の現場で施工管理を担当。笠木の仕上げと床の防水は専門外です。

タイトルとURLをコピーしました