軒天と破風の話【外壁屋が張っている、見上げないと気づかない場所】

5. 職人コラム

外壁の見積もりに、「軒天」「破風」という項目が入っています。

前回、費用の記事でこの名前を出しました。でも——何のことか分かる方は少ないと思います。

どちらも外壁屋の仕事です。そして完成してから、ほとんど見られない場所でもあります。

施工歴16年の職人として、この2つの話を書きます。

軒天と破風の位置を示す図。左は軒先を横から切った断面で、屋根が壁から出た分の裏側に軒天が水平に入る。右は妻側から見た図で、屋根の斜めの縁に破風が付く
軒天は屋根が出た分の裏側、破風は屋根の側面につきます

軒天とは、屋根が出た分の「裏」です

まず軒天(のきてん)から。

本体から出た屋根の下に貼るところを「軒」といいます。

家の壁から、屋根がひさしのように出ていますよね。その裏側です。下から見上げたときに見える面。

屋根が出れば、貼らないといけません

理屈は単純です。

屋根が出れば、そこの裏は貼らないといけない。

出ている以上、裏が空いたままでは家として成立しません。だから塞ぎます。

ない家もあります

逆に言うと——

屋根が出ていなければ、軒天は張る必要がありません。

実際、軒天のない家もあります。最近よく見る、屋根が出ていない箱型の家ですね。

以前「外壁の汚れはどこから出るのか」という記事で、軒が出せるなら出した方がいいと書きました。壁が濡れにくくなるからです。

ただ、軒を出せば軒天の工事が増えます。そこは費用に出てきます。


破風とは、屋根の側面を守るものです

破風(はふ)の方も説明します。

こちらは屋根の側面につく部材です。

役割は2つあります。

  • 屋根の側面を守る
  • 雨仕舞い

屋根の端は、そのままだと構造がむき出しになります。そこを覆って、雨が回り込まないようにする。屋根と壁の境目を納める部材だと思ってください。


材料は、燃えないものを使います

軒天も破風も、不燃材です。

軒天によく使うもの

  • ケイカル板(ケイ酸カルシウム板)
  • 窯業系の材料(サイディングと同じ系統)
  • 有孔ボード(穴の開いたもの)

他にもありますが、私が使ったことがないものは詳しく分かりません。現場でよく出るのはこのあたりです。

破風も同じ系統です

破風は、軒天と同じ不燃材でできた材料を使います。

なぜ燃えない材料なのか

ここは私の理解ですが——軒天も破風も、火が回りやすい場所だからだと思います。

隣の家が燃えたとき、あるいは自分の家から火が出たとき、軒の裏は炎がたまりやすい。だから燃えない材料で塞ぐ。

見えない場所ですが、意味があって不燃材が使われているということです。


張る順番は、決まっているようで決まっていません

工程の話です。

以前「外壁工事は何日かかるか」の記事で、軒天 → 壁 → 破風の順に進むと書きました。

軒天を先にやる理由

理由は3つの兼ね合いです。

  • 雨仕舞い
  • 仕上がり
  • 作業のしやすさ

上から順に納めていった方が、水の流れも、見た目も、作業も素直になる。そういうことです。

ただし、逆のこともあります

絶対ではありません。

ハウスメーカーによっては、通気の関係で順番が変わります。

壁を張り上げてから、軒天の下地を組んで、軒天を張る。そういう現場もあります。

通気層をどこから抜くかによって、納まりが変わるからです。壁の裏を通ってきた空気を、どこで外に出すか——そこの設計次第で、順番が入れ替わります。

「軒天が後になっているから手抜き」ということではありません。そういう納まりなのだと思ってください。


職人が、一番気を使う場所

ここからは現場の話です。

軒天の中でも、特に気を使う場所があります。

玄関まわりと、ベランダの中

玄関まわりと、ベランダの中です。

理由ははっきりしています。

住む人の目が、結構入るからです。

軒天は基本的に見上げないと見えません。でも玄関は毎日通ります。ベランダも洗濯物を干すたびに入る。そこだけは、目線に入ってくるんです。

わからないように仕上げます

だからその2か所は——

  • 汚さない
  • 釘もきれいに留める
  • 本当にわからないように仕上げる

継ぎ目がどこにあるか、釘をどこに打ったか、見ても分からないように納める。

見えない場所だから手を抜く、ではなくて、見える場所だから丁寧にやる。職人はそういう区別をしています。


難しいのは、屋根の裏の「通り」です

技術的に難しいところも書いておきます。

屋根の裏を、通りをきれいに張るのが難しいです。

下地が真っ直ぐではないんです

理由があります。

破風を張る下地の板が、真っ直ぐではないからです。

その曲がりを見ながら軒天を張っていくことになる。これが結構大変です。

下地が真っ直ぐなら、それに沿って張ればいい。でも曲がっていると、どこを基準にするかを自分で判断しないといけません。

以前「割り付け」の記事で、壁を横から見ればデザインのズレが分かると書きました。軒天も同じです。通りが出ていないと、見上げたときに線が曲がって見えます。


破風は、汚さないこと

破風の方は、軒天ほど難しくありません。

気を使うのは——汚さずに張ることです。

長いものを一人で張るのは大変です

ただ、一人でやると長ものを張るのは大変です。

破風は長い材料なので、片側を持ちながらもう片側を合わせる、という作業になります。人手があれば楽ですが、一人だときつい。

そこを除けば、凝った場所がなければ、なんてことはありません。

もちろん、複雑な屋根だと話は別です。以前「家の形で外壁はどう変わるか」で書いたとおり、屋根が複雑な家は、取り合いが増えます。


知っておいてほしいこと:色は選べます

ここが、この記事で一番お伝えしたいところです。

軒天の色は、選べます。

人気があるのは、木目調です

そして——人気があるのは木目調の軒天です。

白い軒天が標準のことが多いですが、木目にすると印象がかなり変わります。玄関まわりに木目が入ると、それだけで雰囲気が出る。

知らないまま白で決まっている方も多いんじゃないかと思います。

破風も選べます

破風も、カタログにある色なら好きな色を選べます。

壁の色に合わせるのか、屋根に合わせるのか、あえて差をつけるのか。ここは外観の印象に効きます。

ただし、たぶんオプションです

大事なことを先に書いておきます。

標準は白で、それ以外はオプションになると思います。

「選べる」というのは、追加費用を払えば選べるという意味です。無料で好きな色にできる、という話ではありません。

ただ、これは私がやっているハウスメーカーがそうだというだけです。全部のメーカーがそうだとは言えません。標準で選択肢がある会社もあるかもしれません。

そこは確認してみてください。

聞かれなければ、標準で決まります

ただ、打ち合わせで話題に出ないことも多いと思います。

壁の色や屋根の色は時間をかけて選ぶのに、軒天と破風は「標準で」と流れてしまう。

もったいないと思います。聞けば選べるものなので。


施主さんへ

まとめると、こういうことです。

① 見積もりに名前が出たら

「軒天」「破風」という項目を見たら、屋根まわりの工事だと思ってください。外壁屋の仕事の一部です。

② 軒を出すかどうかは、費用にも効きます

屋根を出せば、その分だけ軒天の面積が増えます。

壁が濡れにくくなるという利点がある一方で、工事も増える。両方を知ったうえで決めてください。

③ 色を聞いてみてください

これが一番です。

打ち合わせで、こう聞いてみてください。

  • 「軒天と破風の色は選べますか」
  • 「標準は何色ですか」
  • 「変えると追加になりますか。いくらですか」

この3つを聞けば、判断できます。

たぶん追加費用がかかります。そのうえでやるかどうかを決めればいいと思います。玄関まわりは毎日見る場所なので、お金をかける価値があると考える方もいるはずです。


まとめ

項目内容
軒天とは屋根が本体から出た分の裏側。屋根が出ていなければ不要
破風とは屋根の側面を守る部材。雨仕舞いも兼ねる
材料ケイカル板・窯業系・有孔ボードなど。どれも不燃材
順番軒天 → 壁 → 破風が基本。ただし通気の取り方で逆になることもある
気を使う場所玄関まわりとベランダの中(住む人の目が入るから)
難しいところ屋根の裏の通り。破風の下地が真っ直ぐでないため
色選べます。木目調が人気。ただし標準は白で、それ以外はオプションと思われる

軒天も破風も、完成したらほとんど見ない場所です。

でも、玄関まわりだけは毎日見ます。そこを職人が気にして張っている、ということだけ知っておいてもらえたら嬉しいです。

そして——色は、選べます。たぶん追加にはなりますが、聞いてみる価値はあると思います。


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この記事を書いた人:新築外壁施工歴16年の職人。ALCとサイディングを専門に、年間180棟以上の現場で施工管理を担当。

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