外壁の話をするとき、たいてい表面の話になります。色、柄、メーカー、汚れにくさ。
でも、外壁は一枚の板ではありません。
壁の中には、見えない層があります。そして——外壁を張ってしまえば、そこは二度と見えません。
施工歴16年の外壁職人として、壁の裏側で何が起きているかを書きます。
工事中にしか確認できない話なので、これから建てる方に読んでほしいと思っています。
順番は、紙 → 胴縁 → 外壁材
まず全体の構造から。
外壁は、下から順にこうなっています。
- 透湿防水シート(防水紙)を張る
- 胴縁を組む(または通気金具をつける)
- 外壁材を張る
現場では1を「紙張り」と呼びます。私たち外壁屋が最初にやる仕事です。

大事なこと:最後に水を止めているのは「紙」です
ここが、この記事で一番伝えたいところです。
多くの方が、逆に理解していると思います。
「外壁材が雨を防いでいて、中の紙は念のための予備」——そう思っていませんか。
逆です。
外壁材だけで、止めているわけではありません
外壁材にはジョイントがあり、釘やビスの穴があり、サッシとの取り合いがあります。
こういう場所からは、水が入る可能性があります。
誤解のないように書いておくと、普段からどんどん水が入っているわけではありません。雨のほとんどは外壁材が受け止めて、表面を流れ落ちていきます。
ただ——強い風を伴う雨など、条件が重なったときには入ることがある。外壁は、そこまで含めて考えられています。
止めているのは、紙です
入ってきた水を最終的に止めているのが、透湿防水シートです。
つまり——
- 外壁材 → 雨のほとんどを受け止めて、表面を流し落とす
- 防水紙 → それを抜けてきた水を、最後に止める
紙で止まれば、雨漏りにはなりません。逆に言えば、紙の仕事が雑だと、表面がどんなに立派でも意味がない。
だから外壁屋にとって、紙張りは一番神経を使う工程のひとつです。
「透湿」防水シート——水は止めて、湿気は通します
ところで、この紙は「透湿防水シート」という名前です。
防水は分かる。では「透湿」とは何か。
ここが、この材料の一番よくできているところです。
穴は、空いています
透湿防水シートには、目に見えない小さな穴が無数に空いています。0.5〜3マイクロメートルほどの穴です。
「穴が空いているのに防水?」と思うかもしれません。ここに仕掛けがあります。
粒の大きさが、違うんです
- 水蒸気の粒 → 約0.0004マイクロメートル。穴を楽に通り抜けます
- 霧の粒 → 約100マイクロメートル。通れません
- 雨粒 → 約2,000マイクロメートル。まったく通れません
穴の大きさが、水蒸気より大きく、水滴よりはるかに小さい。だから、水は止まって、湿気だけが抜けていきます。
粒の大きさの差で、選り分けているわけです。
だから、通気層とセットなんです
そしてこれが、次の話につながります。
壁の中で出た湿気は、紙を抜けて外に出てきます。でも、出た先が行き止まりだったら意味がない。
紙と通気層は、セットで働いています。紙が湿気を通し、通気層の空気がそれを運び去る。どちらが欠けても成り立ちません。
通気層は、何のためにあるのか
紙の上に胴縁を組むと、外壁材との間に隙間ができます。これが通気層です。
では、何のためにあるのか。
空気をこもらせないためです
理由はシンプルです。空気がこもらないため。
日本は湿気が多い国です。壁の中に空気が滞留すると、湿気が抜けません。
空気の循環を良くして、建物を腐らせないようにする。そのための隙間です。
断熱でも、雨のためでもありません。腐らせないためです。
木造住宅にとって、これは寿命に直結する話です。
胴縁の組み方
通気層をつくる方法は、ひとつではありません。
横胴縁のときは、間隔をあけます
外壁を縦張りするときは、胴縁を横に組みます。
このとき問題になるのが——横に木が通ると、空気の道がふさがれることです。
なので、胴縁の間隔をあけます。一本の長い木をびっしり通すのではなく、切って隙間をつくる。そこを空気が抜けていきます。
加工されている胴縁もあります
もうひとつの方法があります。
最初から加工されている胴縁です。溝が入っていたり、形状が工夫されていたりして、間隔をあけなくても通気がとれるようになっています。
どちらでも通気は確保できます。大事なのは、空気の道があることです。
今の主流は、通気金具です
胴縁を組まない方法もあります。
通気金具工法です。
胴縁を組まず、金具だけで通気をとる
木の胴縁を使わず、金具だけで外壁材を留めて、そこで通気をとる工法です。
金具の形状そのものに通気の役割を持たせているので、胴縁が要りません。
今はこちらが主流です
今の主流は、通気金具です。
ほとんどのハウスメーカーが通気金具だと思います。
ちなみに私が今やっているハウスメーカーは、まだ胴縁です。そういうところもあります。
どちらが優れているという話ではなく、工法が移ってきているということです。
防水紙にも、種類があります
「紙」とひとくくりに言いましたが、中身には差があります。
ハードとソフト
まず、ハードとソフトがあります。
張る側としては、ハードの方が張りやすいです。しっかりしているので、扱いやすい。
正直に書くと、私はずっと「ソフトの方がいい紙」だと思っていました。でも調べたら違いました。そこは後で書きます。
しっかり貼らないと、しわが目立ちます。きれいに張るのは、ソフトの方が難しい。
機能がついた紙もあります
遮熱などの機能を持った紙もあります。
代表的なのが遮熱タイプです。紙の表面にアルミを蒸着させて、赤外線を反射します。夏は外の熱を入れず、冬は中の熱を逃さない。見た目が銀色なので、現場では「シルバーの紙」と呼んでいます。
ただし、遮熱の紙には気をつける点があります
いいことばかりではありません。
アルミは、電波も反射します。
「遮熱の紙は電波が入りにくいらしい」——現場でそういう話を聞いたので、調べてみました。メーカーの公式なよくある質問に、まさにこの項目がありました。
(携帯電話の電波について)ほとんどの場合で使用可能です。ただし、お住まいの地域や住宅の構造、窓ガラスの種類と携帯電話の組み合わせによっては、つながりにくくなります
「ほとんどの場合は問題ない」というのがメーカーの説明です。窓があるので、家が完全に包まれることはないからですね。
ただ、条件によってはつながりにくくなることを、メーカー自身が認めているわけです。
もともと電波が弱い場所なら
気にした方がいいのは、もともと携帯の電波が弱い地域だと思います。
今住んでいる場所で電波が弱いと感じているなら、遮熱の紙を使うかどうか、一度聞いてみてもいいかもしれません。
遮熱の効果を取るか、電波を取るか。そういう選択があることを知っておくだけでも違います。
紙は張ってしまえば交換できません。決めるのは、張る前だけです。
見えなくなる部分ですが、製品としてはちゃんと差があるということです。
ハードとソフトは、デュポンの製品名です
調べてみたら、「ハード」「ソフト」はタイベックの正式な製品名でした。メーカーの説明はこうです。
ハードは表面平滑性に優れ、ソフトは布状のドレープ性を持ちます。これは製造条件の違いによるものです
性能の上下ではありませんでした。どちらもJIS適合品で、むしろハードの方が寒冷地向けの規格をクリアしているとのことです。
私が「ハードの方が張りやすい」「ソフトはしわが目立つ」と感じていたのは、まさにこの平滑か、布っぽいかの違いだったわけです。
ちなみにタイベックは、ハードもソフトも高密度ポリエチレン100%の単層構造で、裏表の性能差もないそうです。
うちで使っているのは、タイベックです
参考までに書いておくと、今うちで使っているのはタイベックです。
紙の中では有名で、いい紙に入ると思います。
施主さんが紙のメーカーを選ぶことはまずありませんが、現場でどんな紙を使っているか聞いてみるのは悪くないと思います。答えられる会社は、そこを気にしているということなので。
紙のまま置いておける期間には、限りがあります
もうひとつ、知っておいてほしいことがあります。
紙を張ってから外壁を張るまで、期間が空くことがあります。職人それぞれの工程の都合で、どうしても間が空く。
ただ、いつまでも紙のままでいいわけではありません。
タイベックの場合は60日
タイベックの取扱説明にはこう書いてあります。
当商品を、直射日光に当たる場所へ長期間放置しないでください。施工後は、60日以内にサイディング貼りを終了してください
紫外線で傷むからです。紙は日に当たり続けると劣化します。
製品によって期間は違うと思いますが、「張ったら早めに外壁を張る」という原則は同じです。
もし工事が長く止まったら
何らかの事情で工事が長期間止まった場合は、紙がそのまま何ヶ月も日にさらされていないか、気にしてみてください。
これは施主さんが心配することというより、管理する側の話です。ただ、知っておいて損はないと思います。
紙張りで、手を抜いてはいけないところ
ここからは、実際に何が問題になるかの話です。
① 重ねしろ
しっかり被せないとまずいです。
紙は一枚ではなく、何枚も重ねて張っていきます。その重なりが足りないと、そこから水が入ります。
② サッシまわりの防水テープ
ちゃんと防水テープにくっつけること。
サッシまわりは雨漏りが一番起きやすい場所です。紙とテープが密着していなければ、そこが弱点になります。
③ バルコニー絡みの天端
バルコニーまわりの天端(てんば)の紙の張り方と、防水処理。
ここは納まりが複雑になるので、丁寧さが出ます。
もうひとつ:張りじまいの処理
これは雨漏りとは関係ないのですが、書いておきたい話です。
紙鳴りが、します
紙を張り終わる部分——張りじまいの処理です。
最後の柱と柱の間を、しっかりタッカーで止めるか、片面テープで止める。
これをやっておかないと——風が強い日に、紙鳴りがします。
これが、結構うるさいんです
パタパタ、バサバサと音がする。
住んだあとに言われることがあります。「風の日に壁から音がするんですが」と。
ただ、住んでからだと直せません
ここが問題です。
住んでからだと、どうすることもできません。
やるとなると大掛かりな工事になります。外壁を全部剥がさないといけないからです。
音のためにそこまでやるかというと、現実的ではない。だから張るときにやっておくしかないんです。
見えない部分の、地味な作業です。でも、そこで住み心地が変わります。
施主さんへ:工事中に、ここを見てください
外壁が張られてしまえば、裏側は二度と見えません。
紙が張られている数日間だけが、確認できる期間です。
難しいことは分からなくて大丈夫です。素人の目でも分かるポイントを挙げます。
① 紙の線が見えていないか
防水紙には、重ねの目印になる線が印刷されています。
その線が見えたままになっていないか。見えているとしたら、テープで処理がしてあるか。
② 切れている部分に、テープがあるか
何かの拍子で紙が切れてしまうことはあります。それ自体は起こりうることです。
大事なのは——切れた部分に、テープで処理がしてあるか。
放置されていたら、そこは弱点になります。
③ きれいに貼ってあるか
最後はこれです。きれいに貼ってあるか。
しわだらけ、たるみだらけ、めくれている。そういう紙張りは、他の部分も推して知るべしです。
写真を撮っておいてください
見に行ったら、写真を撮っておくことをおすすめします。
あとで何かあったとき、「工事中はこうなっていた」という記録は役に立ちます。
そして、職人は見られて困ることはしていません。気楽に見に来てください。
まとめ
| 項目 | 内容 |
| 順番 | 紙張り → 胴縁(または通気金具) → 外壁材 |
| 最後に水を止める層 | 外壁材ではなく「紙」 |
| 通気層の目的 | 空気をこもらせない。建物を腐らせないため |
| 横胴縁 | 間隔をあける。または加工済みの胴縁を使う |
| 今の主流 | 通気金具工法(胴縁を組まず金具で通気をとる) |
| 紙の種類 | ハードとソフトは製品名で、性能の上下ではない。遮熱タイプもあり |
| 遮熱タイプ | アルミ蒸着。条件によって携帯の電波が入りにくくなることがある |
| 張ったあと | 60日以内に外壁を張る(紫外線で傷むため/タイベックの場合) |
| 手を抜けない所 | 重ねしろ・サッシまわりの防水テープ・バルコニー天端 |
| 張りじまい | 止め方が甘いと紙鳴り。住んでからは直せない |
| 見るタイミング | 紙が張られている数日だけ |
外壁の品質は、表面より裏側で決まります。
色や柄は見れば分かります。でも紙の重なりや、張りじまいの処理は、その時に見なければ一生分かりません。
打ち合わせのときに「紙張りが終わったら、一度見に行っていいですか」と聞いてみてください。
嫌がられることはないはずです。
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この記事を書いた人:新築外壁施工歴16年の職人。ALCとサイディングを専門に、年間180棟以上の現場で施工管理を担当。

