「凹凸のある外観にしたい」「シンプルな箱型がいい」
家の形を考えるとき、外観のデザインとして悩むと思います。
では、その形が外壁工事にどう影響するのか。施工歴16年の外壁職人として、張る側から見た話を書きます。
先に結論を言っておくと——壁の凹凸より、屋根の形の方が大事です。
凹凸が増えると、手間と日数が増えます
まず、素直な話から。
複雑な形の家は、手間がかかります。そのぶん日数もかかります。
これは避けられません。何が増えるのかを書きます。
① 出隅の本数が増える
出隅(ですみ)は、壁と壁が外側に向かって合わさる角です。ここには専用のコーナー部材が入ります。
凹凸が増えるほど、この出隅の本数が増えます。
② 入角のコーキングが増える
入角(いりずみ)は、内側に向かって合わさる角です。
ここにはコーキングが入ります。だから、入角が増えればコーキングの箇所も増える。
コーキングは将来の打ち替え対象なので、メンテナンスの箇所が増えるということでもあります。
③ 加工が増える
張る場所が増えると、それだけ加工も多くなります。
角のたびに寸法を取って、切って、納める。まっすぐな面をそのまま張るのとは、作業量が違います。
そして加工が多い=時間がかかるということです。
でも、雨漏りのリスクは「壁の形」ではありません
ここが一番書いておきたいところです。
「複雑な形=雨漏りしやすい」と思われがちですが、私の感覚は少し違います。
建物がただ折れているだけなら、問題ありません
平面的に凹凸があるだけ——つまり建物の形が折れているだけなら、雨漏りの心配はそれほどしません。
出隅も入角も、納め方は決まっています。手間はかかりますが、きちんとやれば問題が出る場所ではないんです。
心配なのは、屋根が複雑な家です
壁の凹凸よりも、屋根が複雑な家の方が雨漏りの心配をします。
理由は、これまでの記事で書いてきたことと重なります。
屋根が複雑になると、取り合いが増えるからです。
- 下屋と外壁の取り合い
- 谷になる部分
- 板金の納まり
- 片流れの頂点
こういった箇所が増えるほど、雨仕舞いを考える場所が増えます。そして雨が入りやすいのは、いつも取り合いの部分です。
だから、見るべきは屋根の形
外観の凹凸は、正直に言えば手間と費用の問題です。
でも屋根の複雑さは、雨漏りのリスクに直結します。
設計の打ち合わせで「かっこいい形にしたい」と話すとき、壁の形より屋根の形を気にしてみてください。
きれいに仕上がるのは、シンプルな家です
正直に書きます。
シンプルな家は、きれいに仕上がります。
まっすぐな面が長く取れれば、板の通りもきれいに出ます。加工が少ないので、精度も安定する。割り付けも素直に組めます。
以前「下屋の取り合いは腕が出る」と書きましたが、逆に言えば、そういう難所が少ない家ほど、仕上がりは安定するということです。
凹凸がダメという話ではありません
誤解のないように書いておきます。
凹凸のある外観が悪いわけではありません。そういう家にしたいなら、そうすればいいと思います。
ただ、手間と費用は増えます。そしてコーキングの箇所が増えるぶん、将来のメンテナンスも増えます。
それを分かったうえで選ぶなら、何の問題もありません。
施主として、どう考えればいいか
整理するとこうなります。
| 気にすること | どう影響するか |
|---|---|
| 壁の凹凸 | 手間・日数・費用が増える。コーキング箇所も増える |
| 壁の凹凸 | ただし雨漏りのリスクは、それほど上がらない |
| 屋根の形 | 複雑なほど雨漏りのリスクが上がる |
| シンプルな形 | 仕上がりが安定する。費用も抑えられる |
デザインの好みは人それぞれなので、「シンプルにしなさい」とは言いません。
ただ、気にする順番を間違えないでほしいと思います。
- 壁の凹凸 → お金と手間の話
- 屋根の形 → 雨漏りの話
打ち合わせで屋根の形を見るとき、「ここは雨がどう流れますか」と聞いてみてください。そこを説明できる設計者や業者は、信頼していいと思います。
まとめ
- 凹凸が増えると出隅・入角のコーキング・加工が増え、手間と日数がかかる
- でも建物が折れているだけなら、雨漏りの心配はそれほどない
- 雨漏りで心配なのは、屋根が複雑な家。取り合いが増えるから
- シンプルな家は、きれいに仕上がる
外壁の話をしてきましたが、最後は屋根の話になりました。
家は全部つながっているので、外壁だけ見ていても分からないことがあります。とくに雨に関しては、屋根から壁への流れで考えないといけません。
あわせて読みたい
- ベランダ・下屋と外壁の「取り合い」【職人の腕が一番出るところ】
- 外壁で雨が入りやすい場所【職人が現場で一番気をつけているところ】
- 図面では分からない外壁の落とし穴【職人が設計段階で伝えたいこと】
- 外壁の汚れは、どこから出るのか【職人が見てきた傾向】
- 外壁屋から見た、屋根の話【専門外ですが、隣で見ています】
- 外壁の費用は何で決まるのか【職人の手間から見た、値段の中身】
- 軒天と破風の話【外壁屋が張っている、見上げないと気づかない場所】
この記事を書いた人:新築外壁施工歴16年の職人。ALCとサイディングを専門に、年間180棟以上の現場で施工管理を担当。
