新築の現場で、施主さんによく聞かれる質問があります。
「この継ぎ目のゴムみたいなの、何年もつんですか?」
シーリング(コーキング)のことです。外壁材の継ぎ目や、サッシのまわりに打ってある、あのゴム状の部分です。
施工歴16年の外壁職人として、正直に答えます。「何年もつか」は、材料と場所でぜんぶ変わります。一律に「10年です」とは言えません。
この記事では、シーリングの本当の寿命、劣化のサイン、打ち替えの時期、そして施主さんが自分でできるチェックの仕方を書きます。
シーリングは何のためにあるのか
外壁材は、板を並べて張っていきます。並べる以上、必ず継ぎ目ができます。
その継ぎ目を埋めているのがシーリングです。役割は2つ。
ひとつは、水の入り口を減らすこと。もうひとつは、動きを吸収することです。
家は動きます。地震はもちろん、気温で外壁材が伸び縮みしますし、風でも揺れます。継ぎ目を硬いもので埋めたら、動いたときに割れます。だからゴム状の、伸び縮みするもので埋めているんです。
つまりシーリングは、動き続けるのが仕事です。動き続けるから、いつか疲れて切れる。消耗品です。ここをまず知っておいてください。
本当の寿命は「材料」で決まります
よく「シーリングの寿命は5〜10年」と言われます。間違いではありませんが、幅がありすぎて役に立ちません。
現場から見ると、寿命を決めるのはまず材料です。
新築でどのグレードのシーリングが使われているかは、施主さんからは見えません。同じ見た目でも、中身はピンからキリまであります。安いものと高耐久のものでは、もちが倍以上違うことがあります。
これから建てる方は、仕様書の「シーリング」「コーキング」の項目を見てみてください。高耐久をうたう材料が指定されているか。書いていなければ、営業さんに聞いていい部分です。
ただし、ここで「じゃあ何年もつんですか」と聞いたときの答えには注意が必要です。その話は後半に書きます。
「場所」でも寿命は変わります
同じ家の、同じ材料でも、場所によって傷み方はまったく違います。
一番傷むのは南面と西面。理由は紫外線です。シーリングの一番の敵は、雨より紫外線なんです。日がよく当たる面から先に傷みます。
逆に北面は、同じ年数でもきれいなことが多い。
だから点検のときは、南か西の、日がよく当たる継ぎ目を見てください。そこが一番進んでいる場所です。そこが無事なら、他はだいたい無事です。
ALCの家は、特にシーリングが命です
私はALCとサイディングを専門にしてきましたが、ALCの家の方には特に伝えたいことがあります。
ALCはパネルの寸法が小さいぶん、継ぎ目の数がサイディングよりずっと多いんです。壁一面が目地だらけ、と言ってもいいくらいです。
しかもALCは水を吸いやすい材料です。塗装とシーリングで守られている状態で、シーリングが切れると、そこから水を吸います。
ALCの家は「外壁材は丈夫、でも目地は消耗品」。この組み合わせだと覚えておいてください。
劣化のサイン【この順番で進みます】
シーリングの劣化には、だいたい順番があります。
① 表面のひび(細かい割れ)
表面に細かいひびが入って、白っぽく粉を吹いたようになります。この段階では、まだ中まで切れていません。すぐ雨漏りする状態ではありませんが、劣化は始まっています。
② 肉やせ
シーリングが痩せて、へこんできます。打った当時よりゴムの量が減って、細くなっている状態です。
③ 剥離(はくり)
シーリングと外壁材の間に、すき間ができます。ゴム自体は残っているのに、壁から離れてしまっている状態。横から見てすき間が見えたら、もう水は入っています。
④ 破断
ゴムが真ん中から切れて、奥が見えている状態です。ここまで来たら待ったなしです。
①②は「そろそろ計画を」、③④は「早めに手を打つ」段階。この目安で見てください。
「打ち替え」と「増し打ち」の違い
補修には2つのやり方があります。ここは業者の見積もりを見るときに大事なところです。
打ち替えは、古いシーリングを撤去して、新しく打ち直すこと。増し打ちは、古いものの上から足すことです。
原則を言います。外壁材の継ぎ目は、打ち替えです。
古いゴムの上に新しいゴムを乗せても、下が傷んでいれば一緒に剥がれます。厚みも確保できません。
サッシまわりも、打ち替えられます
ここは、よく言われている話と違うことを書きます。
「サッシまわりは、撤去するときにカッターで奥の防水テープや防水紙を切ってしまうから、増し打ちにする」——こう説明されることがあります。
でも、実際にやっている側から言うと、奥の紙やテープは、そう簡単には切れません。
理由は単純で、カッターがそこまで届かないからです。硬くて、奥まで刃が入っていきません。私も何度も撤去していますが、コーキングを撤去する作業のなかで奥まで刃が到達することは、まずないです。
なので正直に言います。サッシまわりも、打ち直せるなら打ち直した方がいいです。
ではなぜ増し打ちが多いのか。やる側が楽だからです。これは本当のところです。撤去は手間がかかるし、時間もかかる。増し打ちなら早く終わります。
もちろん、状況によって増し打ちが妥当な場面もあります。ただ、「防水紙を切るから増し打ち」という説明を鵜呑みにする必要はありません。気になったら「打ち替えはできませんか」と聞いてみてください。
営業トークの「30年もちます」は、信じないでください
もうひとつ、はっきり書いておきたいことがあります。
高耐久のシーリング材を勧めるときに、「これなら30年もちます」と言われることがあります。
これは信じない方がいいです。
理由は簡単で、消耗品が30年もつわけがないからです。シーリングは動き続けるのが仕事だと、最初に書きました。動き続けるものは、いつか必ず疲れて切れます。
なぜここを強く言うかというと、あとで誰も得をしないからです。
「30年もつと言われたのに、もう切れた」——高いお金を払って、いいものを選んだのに早く切れたら、怒りたくなるのは当然です。その気持ちはよく分かります。
でも、私たち職人はいずれ打ち直しに行くことになります。そのとき、話が違うと感じているお客さんとやり取りをすることになる。これが本当にやりづらい。お互いにとって、いいことが何もないんです。
だから最初にこう思っておいてほしいんです。「そこまではもたないかもしれない」と。
ただし、いい材料は使った方がいいです
誤解しないでほしいのですが、高耐久のシーリングがいいものであることは間違いありません。
安いものより明らかに長持ちしますし、予算が許すなら使った方がいいと、職人としてはっきり思います。
問題は材料ではなく、「30年」という数字の売り方です。
いいものを使う。でも、永久ではないと知っておく。この2つはどちらも正しいです。
つまり「全部打ち替えが正解」でも「増し打ちは手抜き」でもありませんが、迷ったら打ち替え。これが現場からの本音です。
施主さんが自分でできるチェック
道具はいりません。年に1回、これだけやってください。
- 南面か西面の目地を見る。一番傷む場所から見るのが効率的です
- 横からすき間を見る。正面からは剥離が分かりにくいので、斜めから覗いてください
- 指で軽く押してみる。弾力があれば生きています。カチカチに硬い、または粉が付くようなら劣化しています
高い場所は無理をしないでください。2階の目地は地上から双眼鏡やスマホのズームで十分です。梯子には登らないでください。私たち職人でも、外壁の点検は足場か高所用の道具を使います。
「シーリングが切れてますよ」と訪ねてくる業者について
ここまで読むと分かると思いますが、シーリングの劣化は地上から見えます。
だから訪問営業の定番の入り口になっています。「近くで工事をしていて、お宅の目地が切れているのが見えたので」——この記事を読んだ方なら、まず自分の目で確かめられるはずです。
本当に切れていることもあります。でも、その場で契約する理由はひとつもありません。詳しくは外壁の訪問営業、職人が聞くと成立していない5つの決まり文句に書いたので、そちらを読んでください。
まとめ
| 項目 | 現場からの本音 |
|---|---|
| 寿命 | 材料と場所で決まる。「一律10年」ではない |
| 一番の敵 | 雨より紫外線。南面・西面から傷む |
| ALCの家 | 目地の数が多い。「目地は消耗品」と覚えておく |
| 劣化の順番 | 表面のひび → 肉やせ → 剥離 → 破断 |
| 補修 | 迷ったら打ち替え。サッシまわりも打ち直せます |
| 「30年もちます」 | 信じない。ただし高耐久材そのものは使う価値あり |
| チェック | 年1回、南か西の目地を横から見る。梯子には登らない |
シーリングは消耗品です。切れること自体は、施工不良でも欠陥でもありません。
大事なのは、切れる前提で、たまに見てあげること。年に1回、南側の壁をぐるっと見るだけで、打ち替えの時期を自分で判断できるようになります。
外壁は「張ったら終わり」ではありません。でも、難しいことをする必要もありません。見るだけでいいんです。
