外壁の見積もりに、「軒天」「破風」という項目が入っています。
前回、費用の記事でこの名前を出しました。でも——何のことか分かる方は少ないと思います。
どちらも外壁屋の仕事です。そして完成してから、ほとんど見られない場所でもあります。
施工歴16年の職人として、この2つの話を書きます。

軒天とは、屋根が出た分の「裏」です
まず軒天(のきてん)から。
本体から出た屋根の下に貼るところを「軒」といいます。
家の壁から、屋根がひさしのように出ていますよね。その裏側です。下から見上げたときに見える面。
屋根が出れば、貼らないといけません
理屈は単純です。
屋根が出れば、そこの裏は貼らないといけない。
出ている以上、裏が空いたままでは家として成立しません。だから塞ぎます。
ない家もあります
逆に言うと——
屋根が出ていなければ、軒天は張る必要がありません。
実際、軒天のない家もあります。最近よく見る、屋根が出ていない箱型の家ですね。
以前「外壁の汚れはどこから出るのか」という記事で、軒が出せるなら出した方がいいと書きました。壁が濡れにくくなるからです。
ただ、軒を出せば軒天の工事が増えます。そこは費用に出てきます。
破風とは、屋根の側面を守るものです
破風(はふ)の方も説明します。
こちらは屋根の側面につく部材です。
役割は2つあります。
- 屋根の側面を守る
- 雨仕舞い
屋根の端は、そのままだと構造がむき出しになります。そこを覆って、雨が回り込まないようにする。屋根と壁の境目を納める部材だと思ってください。
材料は、燃えないものを使います
軒天も破風も、不燃材です。
軒天によく使うもの
- ケイカル板(ケイ酸カルシウム板)
- 窯業系の材料(サイディングと同じ系統)
- 有孔ボード(穴の開いたもの)
他にもありますが、私が使ったことがないものは詳しく分かりません。現場でよく出るのはこのあたりです。
破風も同じ系統です
破風は、軒天と同じ不燃材でできた材料を使います。
なぜ燃えない材料なのか
ここは私の理解ですが——軒天も破風も、火が回りやすい場所だからだと思います。
隣の家が燃えたとき、あるいは自分の家から火が出たとき、軒の裏は炎がたまりやすい。だから燃えない材料で塞ぐ。
見えない場所ですが、意味があって不燃材が使われているということです。
張る順番は、決まっているようで決まっていません
工程の話です。
以前「外壁工事は何日かかるか」の記事で、軒天 → 壁 → 破風の順に進むと書きました。
軒天を先にやる理由
理由は3つの兼ね合いです。
- 雨仕舞い
- 仕上がり
- 作業のしやすさ
上から順に納めていった方が、水の流れも、見た目も、作業も素直になる。そういうことです。
ただし、逆のこともあります
絶対ではありません。
ハウスメーカーによっては、通気の関係で順番が変わります。
壁を張り上げてから、軒天の下地を組んで、軒天を張る。そういう現場もあります。
通気層をどこから抜くかによって、納まりが変わるからです。壁の裏を通ってきた空気を、どこで外に出すか——そこの設計次第で、順番が入れ替わります。
「軒天が後になっているから手抜き」ということではありません。そういう納まりなのだと思ってください。
職人が、一番気を使う場所
ここからは現場の話です。
軒天の中でも、特に気を使う場所があります。
玄関まわりと、ベランダの中
玄関まわりと、ベランダの中です。
理由ははっきりしています。
住む人の目が、結構入るからです。
軒天は基本的に見上げないと見えません。でも玄関は毎日通ります。ベランダも洗濯物を干すたびに入る。そこだけは、目線に入ってくるんです。
わからないように仕上げます
だからその2か所は——
- 汚さない
- 釘もきれいに留める
- 本当にわからないように仕上げる
継ぎ目がどこにあるか、釘をどこに打ったか、見ても分からないように納める。
見えない場所だから手を抜く、ではなくて、見える場所だから丁寧にやる。職人はそういう区別をしています。
難しいのは、屋根の裏の「通り」です
技術的に難しいところも書いておきます。
屋根の裏を、通りをきれいに張るのが難しいです。
下地が真っ直ぐではないんです
理由があります。
破風を張る下地の板が、真っ直ぐではないからです。
その曲がりを見ながら軒天を張っていくことになる。これが結構大変です。
下地が真っ直ぐなら、それに沿って張ればいい。でも曲がっていると、どこを基準にするかを自分で判断しないといけません。
以前「割り付け」の記事で、壁を横から見ればデザインのズレが分かると書きました。軒天も同じです。通りが出ていないと、見上げたときに線が曲がって見えます。
破風は、汚さないこと
破風の方は、軒天ほど難しくありません。
気を使うのは——汚さずに張ることです。
長いものを一人で張るのは大変です
ただ、一人でやると長ものを張るのは大変です。
破風は長い材料なので、片側を持ちながらもう片側を合わせる、という作業になります。人手があれば楽ですが、一人だときつい。
そこを除けば、凝った場所がなければ、なんてことはありません。
もちろん、複雑な屋根だと話は別です。以前「家の形で外壁はどう変わるか」で書いたとおり、屋根が複雑な家は、取り合いが増えます。
知っておいてほしいこと:色は選べます
ここが、この記事で一番お伝えしたいところです。
軒天の色は、選べます。
人気があるのは、木目調です
そして——人気があるのは木目調の軒天です。
白い軒天が標準のことが多いですが、木目にすると印象がかなり変わります。玄関まわりに木目が入ると、それだけで雰囲気が出る。
知らないまま白で決まっている方も多いんじゃないかと思います。
破風も選べます
破風も、カタログにある色なら好きな色を選べます。
壁の色に合わせるのか、屋根に合わせるのか、あえて差をつけるのか。ここは外観の印象に効きます。
ただし、たぶんオプションです
大事なことを先に書いておきます。
標準は白で、それ以外はオプションになると思います。
「選べる」というのは、追加費用を払えば選べるという意味です。無料で好きな色にできる、という話ではありません。
ただ、これは私がやっているハウスメーカーがそうだというだけです。全部のメーカーがそうだとは言えません。標準で選択肢がある会社もあるかもしれません。
そこは確認してみてください。
聞かれなければ、標準で決まります
ただ、打ち合わせで話題に出ないことも多いと思います。
壁の色や屋根の色は時間をかけて選ぶのに、軒天と破風は「標準で」と流れてしまう。
もったいないと思います。聞けば選べるものなので。
施主さんへ
まとめると、こういうことです。
① 見積もりに名前が出たら
「軒天」「破風」という項目を見たら、屋根まわりの工事だと思ってください。外壁屋の仕事の一部です。
② 軒を出すかどうかは、費用にも効きます
屋根を出せば、その分だけ軒天の面積が増えます。
壁が濡れにくくなるという利点がある一方で、工事も増える。両方を知ったうえで決めてください。
③ 色を聞いてみてください
これが一番です。
打ち合わせで、こう聞いてみてください。
- 「軒天と破風の色は選べますか」
- 「標準は何色ですか」
- 「変えると追加になりますか。いくらですか」
この3つを聞けば、判断できます。
たぶん追加費用がかかります。そのうえでやるかどうかを決めればいいと思います。玄関まわりは毎日見る場所なので、お金をかける価値があると考える方もいるはずです。
まとめ
| 項目 | 内容 |
| 軒天とは | 屋根が本体から出た分の裏側。屋根が出ていなければ不要 |
| 破風とは | 屋根の側面を守る部材。雨仕舞いも兼ねる |
| 材料 | ケイカル板・窯業系・有孔ボードなど。どれも不燃材 |
| 順番 | 軒天 → 壁 → 破風が基本。ただし通気の取り方で逆になることもある |
| 気を使う場所 | 玄関まわりとベランダの中(住む人の目が入るから) |
| 難しいところ | 屋根の裏の通り。破風の下地が真っ直ぐでないため |
| 色 | 選べます。木目調が人気。ただし標準は白で、それ以外はオプションと思われる |
軒天も破風も、完成したらほとんど見ない場所です。
でも、玄関まわりだけは毎日見ます。そこを職人が気にして張っている、ということだけ知っておいてもらえたら嬉しいです。
そして——色は、選べます。たぶん追加にはなりますが、聞いてみる価値はあると思います。
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この記事を書いた人:新築外壁施工歴16年の職人。ALCとサイディングを専門に、年間180棟以上の現場で施工管理を担当。
