窯業系と金属、張る側から見た違い【両方やっている職人の話】

5. 職人コラム

窯業系サイディングと金属サイディング。

性能や見た目の比較は、いろいろなところで読めます。でも「張る側から見てどう違うか」は、あまり書かれていません。

施工歴16年、両方を張ってきた立場から、現場での違いを書きます。

施主さんに直接関係のない話も出てきますが、材料の性格が分かると思います。


切るとき

まず、切る作業から。

刃が違います

同じ丸鋸でも、刃が違います。

  • 窯業系:ダイヤのチップが付いた刃
  • 金属:金属を切る専用の刃

素材が違うので、当然と言えば当然です。

粉じんの量が、まるで違う

ここははっきり差が出ます。

窯業系は、粉じんがたくさん出ます。

セメント質の板を切るので、白い粉が大量に舞います。集塵機を使っていても、完全には防げません。

金属は、粉じんが全然出ません。

この差は大きいです。近隣への配慮という意味でも、自分の身体という意味でも。

ただし、金属には別の注意があります

粉じんが出ないから安心かというと、そうでもありません。

金属を切ったときの細かい粉が、水切りに付着すると錆びることがあります。

水切りは外壁の一番下にある金属の部材です。そこに切りくずが乗ったまま放置されると、そこから錆が出る。

だから、水切りの近くで切らない。あるいは、切ったら片付ける。ここは気をつけている部分です。

以前「引き渡し前に水切りを見てください」と書きましたが、こういう理由もあります。

切った感覚の違い

刃が新しいかどうかで変わるので一概には言えませんが、傾向としてはこうです。

窯業系は、刃が減ってくるとどんどん切りづらくなります。手応えが重くなっていく。

金属は、軽く切れます。ただ、硬いものを切っている感覚があります。すっと入るけれど、素材の硬さは手に伝わってくる。


重さ

ここが一番の違いかもしれません。

重さは全然違います。金属は本当に軽い。

体の楽さが違います

外壁材は、一枚一枚を手で運んで、上にあげていきます。

その一枚が軽いというのは、一日の終わりに全然違うんです。

正直に書きます。

金属をやったあとだと、もう窯業系はやりたくなくなります。

それくらい差があります。

家にとってもいい

これは施主さんに関係のある話です。

軽いということは、家に重さがかからないということです。

外壁は家の全周に張るものなので、その総重量は相当なものになります。軽い方が建物への負担が少ない。地震のときのことを考えても、軽い方がいいです。

職人が楽だから、というだけの話ではありません。


一日に張れる量

「どっちが早いですか」とよく聞かれます。

正確に比べて数えたことはないのですが、トータルするとあまり変わらないと思います。

ただ、進み方の性格が違います。

窯業系:準備が軽く、本番に集中できる

窯業系は、一番下のスターターさえ付けてしまえば、あとはすぐ張れます。

スターターというのは、最初の一段目を張るときに使う部材です。これが付けば、あとは上に積んでいくだけ。

そこから先は、壁にだけ集中すればいい。淡々と進みます。

金属:準備に時間がかかる、始まれば楽

金属は逆です。

張り始めるまでの準備に、時間がかかります。

何をしているかというと、受けの部材を先に取り付けていく作業です。

  • サッシまわり
  • 張り出しのスタート部分
  • 張り終わりの部分

こういった箇所に、板を受けるための部材を先に付けておく必要があります。これが手間です。

でも、その準備さえ終わってしまえば、あとは楽に進みます。軽いので、作業自体はスムーズです。

だから、トータルでは変わらない

  • 窯業系=準備は楽、本番は大変
  • 金属=準備は大変、本番は楽

最終的に、同じくらいに落ち着きます。


気の使い方は、どちらも同じです

「どっちの方が神経を使いますか」と聞かれたら、答えはこうです。

どっちも平等に気を使います。

傷の直り方は違いますが

前に書いたとおり、傷が付いたときの話は違います。

  • 金属:補修しても分かってしまう
  • 窯業系:補修すればある程度分からなくなる

でも、これは直せるかどうかの話であって、気を使うかどうかの話ではありません。

どちらも仕上げ材です。張ったらそれが家の外観になる。だから、同じように気を使います。

「窯業系は直せるから雑でいい」ということには、絶対になりません。


まとめ

項目窯業系金属
刃ダイヤチップ金属用
粉じんたくさん出るほぼ出ない
注意点粉じん対策切りくずが水切りに付くと錆びる
切る感覚刃が減ると重くなる軽く切れるが硬い感触
重さ重い本当に軽い
進み方準備が軽く、本番に集中準備が重く、始まれば楽
気の使い方どちらも同じどちらも同じ

施主さんにとって、何の意味があるか

ここまで職人の話をしてきましたが、ひとつだけ持ち帰ってほしいことがあります。

金属サイディングは、家にとって軽い。

これは施工のしやすさとは別に、建物への負担という実利があります。地震の多い国で、外壁が軽いというのは意味のあることです。

もうひとつ。

どちらを選んでも、張る側の気の使い方は変わりません。

「安い材料だから雑にやる」ということはない、というのは、知っておいてもらっていいと思います。


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この記事を書いた人:新築外壁施工歴16年の職人。ALCとサイディングを専門に、年間180棟以上の現場で施工管理を担当。

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