新築の引き渡し前に、施主検査(内覧会)がありますよね。
あのとき、外壁を見ても何を見ればいいか分からないという方が多いと思います。室内はクロスの継ぎ目や建具の動きなど、生活のイメージがつくので見やすい。でも外壁は「まあ、きれいに張ってあるな」で終わってしまいがちです。
施工歴16年の外壁職人として、引き渡し前に私が実際に見ている場所をそのまま書きます。専門知識がなくても見られるところばかりです。
まず、見るタイミングが大事です
チェックの中身より先に、これを言っておきます。
足場が外れてから見てください。
足場があるうちは、外壁の全体が見えません。足場の板やシートが視界を遮るので、ラインの通りも色の見え方も判断できないんです。
そのうえで、晴れた日の明るい時間に見てください。曇りの日や夕方は、傷や色ムラが見えにくくなります。
見る順番は、遠くから全体 → 近くで細部です。いきなり近づくと、木を見て森を見ずになります。
① 遠くから全体を見る:ラインの通り
まず、道路の反対側くらいまで離れて、家全体を見てください。
見るのは板のラインが揃っているかです。横張りなら水平のライン、縦張りなら縦のラインが、まっすぐ通っているか。
コツがあります。壁を横から見ると、デザインのズレが分かりやすくなります。正面から見ているだけでは気づかないずれも、角度をつけて見ると見えてくるんです。
ラインが波打っていたり、途中で段差になっていたら、下地の胴縁の取り付け精度に問題があった可能性があります。
② 出隅・入隅の継ぎ目
家の角の部分です。外側に出っ張った角を出隅(ですみ)、内側に引っ込んだ角を入隅(いりずみ)と言います。
ここには専用のコーナー部材が入ります。見るのは——
- 部材の継ぎ目が開いていないか
- 上下の継ぎ目の位置が不自然でないか
- 角の線がまっすぐ通っているか
角は目線がいきやすい場所なので、ここがきれいだと家全体の印象が変わります。逆に言うと、雑な仕事はここに出ます。
③ サッシまわりのコーキング
窓の周りに打ってあるコーキング(シーリング)です。
ここが一番、後々の雨漏りに関わる場所なので、しっかり見てください。
- 途中で切れている箇所がないか
- 隙間や穴が空いていないか
- 幅が極端に細くなっている箇所がないか
- ひび割れが入っていないか
打ちたてのコーキングにひび割れが入ることはありません。もしあれば、施工に何か問題があった可能性があります。
④ 傷・凹み
金属系サイディング(ガルバリウム)は特に、傷や凹みが分かりやすい素材です。
見るべき場所には傾向があります。
- 人の動線側(玄関まわり、通路になっていた場所)
- 資材を搬入した側
- 駐車場に面した面
工事中は職人や資材が家の周りを行き来しているので、どうしても物が当たりやすい場所があります。
⑤ 換気フード・配管まわり
外壁を貫通しているもの——換気フード、エアコンのスリーブ、配管などの周りです。
- 部材と外壁の間に隙間が空いていないか
- 周囲のシーリング処理がされているか
- フードが傾いていないか
貫通部は雨水の侵入口になりやすいので、処理が甘いと後で困ります。
⑥ 水切り
外壁の一番下、基礎との境目に付いている金属の部材が「水切り」です。壁を伝った雨水を外に逃がす役割があります。
低い位置なので見落とされがちですが、ここはよく見てください。
- 曲がっていないか
- 傷・凹みがないか
- ジョイント(継ぎ目)がしっかり刺さっているか
- 出角・入角の部分(ここは必ず確認してください)
水切りは細長い部材をつないでいくものなので、ジョイントの差し込みが浅いと、そこから水の流れが変わります。角の部分は特に納まりが難しい場所なので、必ず見てほしいところです。
しゃがまないと見えない高さですが、その価値はあります。
「指摘すべきこと」と「そういうもの」の線引き
ここが一番大事な話かもしれません。
外壁は工業製品を人の手で張るものなので、すべてが完璧に揃うことはありません。どこまでを指摘して、どこからを受け入れるか。職人としての正直な線引きを書きます。
指摘していいこと
- コーキングの切れ・隙間・穴
- 明らかな傷・凹み
- ラインの通りが明らかにずれている
- 部材の継ぎ目が開いている
- 貫通部の処理が甘い
そういうものだと考えてほしいこと
- ロットによる微妙な色差:サイディングは製造ロットが違うと、わずかに色が違うことがあります。並べて比べれば分かる程度の差は、避けられません。
- 見る角度による色の違い:同じ面でも、光の当たり方で見え方が変わります。特に金属系は顕著です。
- コーキングの微細な凹凸:手で打つものなので、定規で引いたようにはなりません。
「絶対に完璧でないと嫌だ」となると、お互いに苦しくなります。機能に関わる部分は妥協しない、見た目の微差は受け入れる——この線引きがいいと思います。
気になる箇所が見つかったら
その場で口頭で伝えるだけにせず、必ず記録に残してください。
- 写真を撮る(引きの写真と寄りの写真を両方)
- 場所を特定できるようにメモする(南面の窓の右下、など)
- 書面やメールで残す
口頭だけだと「言った・言わない」になりがちです。引き渡し後は対応が鈍くなることもあるので、引き渡し前のこの段階で書面にしておくのが確実です。
補修の内容と時期も、その場で確認しておいてください。
チェックリスト
印刷するかスマホに入れて、当日持っていってください。
| 見る場所 | チェック内容 |
|---|---|
| 全体(遠くから) | 板のラインが揃っているか、横から見てズレがないか |
| 出隅・入隅 | 継ぎ目が開いていないか、角の線が通っているか |
| サッシまわり | コーキングの切れ・隙間・ひび割れ |
| 壁面全体 | 傷・凹み(動線側・搬入側を重点的に) |
| 換気フード・配管 | 隙間、シーリング処理、傾き |
| 水切り | 曲がり・傷・凹み、ジョイントの差し込み、出角・入角 |
まとめ
外壁は、住み始めてから毎日目に入る部分です。しかも簡単には直せません。
だからこそ、引き渡し前のこのタイミングでしっかり見てほしい。専門知識は要りません。今回挙げた場所を、明るい日に、遠くと近くから見るだけで十分です。
そして、気になったことは遠慮なく聞いてください。「これは仕様ですか?」「これは直りますか?」と聞かれて嫌がる職人や現場監督は、そもそも信用しない方がいいです。ちゃんとやっている現場なら、聞かれても困りません。
いい家になることを願っています。
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この記事を書いた人:新築外壁施工歴16年の職人。ALCとサイディングを専門に、年間180棟以上の現場で施工管理を担当。