「大手のハウスメーカーのほうが、施工はしっかりしているんでしょうか」
家を建てる方から、よく聞かれる質問です。
施工歴16年、ハウスメーカーの現場にも工務店の現場にも入ってきた立場から、正直に答えます。この質問は、比べる相手が違います。
外壁の仕上がりを一番左右しているのは、工務店かハウスメーカーかではありません。注文住宅か、分譲住宅かです。
今日はそこを、現場の話として書きます。少し言いにくいことも書きますが、家を建てる方が知っておいたほうがいいことなので、隠さずにいきます。
前提:外壁を張っている職人は、実は同じ
最初にこれを知っておいてください。
ハウスメーカーの家も、工務店の家も、実際に外壁を張っているのは同じ地域の専門業者です。今日は大手の現場、明日は地元の工務店の現場、ということが普通に起きます。
「大手だから専属のすごい職人がいる」わけではありません。同じ職人が、看板を変えて入っているだけです。
ただし、誰が来るかは決まっていない
ここからが大事な話です。
どの職人がどの現場に入るかは、基本的に工程で決まります。その日に空いている職人が入る、という組み方です。
ただし例外があります。とくに綺麗に仕上げないといけない現場のときは、抱えている職人の中から腕のいい人間を選んで入れます。
これは、施主さんからは絶対に見えない部分です。会社を選んだ時点で仕上がりが決まると思われがちですが、実際にはその現場にどの職人が回されたかという、もう一段下のところで差がついています。
「この現場は腕のいい職人を入れよう」となるとき
もうひとつ、正直に書いておきます。現場に入る前に、こういう情報が回ってくることがあります。
- 施主さんが同業者、または建築に関わる仕事の方
- 施主さんが立場のある方
- 過去にやり直しが出たことのある現場
こういう現場には、腕の悪い職人は入れられません。
誤解しないでほしいのですが、これは「うるさい施主さんだから気をつけよう」という話ではありません。単純に、見るところが違うんです。
建築に関わっている人は、建物のどこを見ればいいかを知っています。一般の方が気づかない箇所を、当たり前のように確認します。だから下手な施工をすれば、その場でばれます。そしてやり直しになります。
つまりごまかしが利かない現場だから、最初から腕のいい人間を入れる。それだけの話です。
ここが、一般の施主さんにとって大事なところ
では建築の仕事をしていない人は不利なのかというと、そうではありません。
「見るところを知っている」というのは、専門知識のことではないからです。
外壁で言えば、コーキングがまっすぐ通っているか、ビスの位置が揃っているか、継ぎ目の処理が雑になっていないか。この程度で十分です。資格も経験もいりません。
大事なのは知識の量ではなく、この施主さんは見る人だ、と現場に伝わっているかどうかです。怒鳴る必要も、細かく指摘する必要もありません。足を運んで、実際に壁を見ている。それだけで伝わります。
この記事の後半に、施主さんが自分で確認できるポイントを書きました。そこを押さえておけば、建築関係者でなくても同じ効果があります。
そして「綺麗に仕上げないといけない現場」と判断されるかどうかは、多くの場合、注文住宅か分譲住宅かで変わります。
注文住宅の現場で起きていること
注文住宅は、工期に無理が出そうなときは工期のほうを伸ばします。
もちろん最初から、そうならないように工程を組みます。それでも雨が続いたり、前工程が押したりすれば、予定はずれます。そのときに仕上がりを削るのではなく、日程を延ばして対応するのが注文住宅の現場です。
施主さんが決めた仕様で、施主さんのために建てている家なので、当然といえば当然です。私たちも、そこは頑張って守ります。
分譲住宅の現場で起きていること
問題はこちらです。ここは正直に書きます。
分譲住宅は棟数が多いです。同じ現場で何棟も同時に進みます。そうなると何が起きるか。
職人の数が足りなくなります。
現場はパンクします。工期を伸ばしても追いつかないことがあります。そして、どうしても厳しいときは——施工が荒くなります。これが正直なところです。
職人の腕が悪いからではありません。手を抜きたいと思っている職人もいません。時間をかけたいところに、時間をかけられなくなるという話です。
それでも「押さえるところは押さえる」
誤解のないように書いておきますが、荒くなるといっても、家として成立しなくなる部分は絶対に押さえます。
防水シートの重ね、通気層の確保、雨仕舞い——ここを飛ばしたら家が持ちません。ここは何があっても押さえます。
では何が荒くなるのか。時間をかけただけ良くなる部分です。
- コーキングの仕上げの美しさ
- 継ぎ目やビスの位置の揃い方
- 出隅・入隅の納まりの丁寧さ
- 細かい傷の手直し
- 乾燥や養生にかけられる時間
つまり雨漏りはしないが、見た目や細部の詰めが甘くなるということです。10年後に効いてくるかどうかは、正直なところ場所によります。
では、工務店とハウスメーカーの違いは何なのか
主軸ではないと書きましたが、違いがないわけではありません。職人から見た違いはこうです。
ハウスメーカー:マニュアルと工程がきっちりしている
決まりごとが細かく決まっていて、検査もあります。誰が入っても一定の水準に収まる仕組みになっているのは、素直に良いところです。
反面、工期重視で、基本的に工程に追われています。納まりが標準化されているぶん作業自体は早いのですが、余裕はありません。
工務店:融通が利くが、現場ごとに違う
工期の縛りは緩く、融通が利きます。とはいえ、次の現場が詰まっているのでのんびりできるわけではありません。
職人側から見ると、工務店の現場は少し慣れが必要です。理由は2つあります。
- 納まりが標準化されていない。凝った納まりが多く、現場ごとにやり方が違います
- 使う部材や工法が、大手より一世代古いことがあります。新しい工法や新しい部材の導入は、ハウスメーカーのほうが早いです
そして細かい指摘が多いのも工務店の現場です。これは悪い意味ではありません。監督や設計の方が細部まで見ているということで、施主さんにとってはむしろ良い話です。
施主が確認しておくといいこと
会社選びの話ではなく、決めたあとに確認できることを書きます。
①「この現場は何棟同時に動いていますか」と聞く
分譲でも、棟数と職人の頭数が釣り合っていれば問題ありません。危ないのは棟数に対して人が足りていない現場です。この質問に具体的に答えられる会社は、現場を把握しています。
②工程表をもらって、雨のあとに確認する
雨で流れたぶんをどこで吸収したのかを見てください。工期を延ばしたのか、どこかを詰めたのか。ここに会社の姿勢が出ます。
③足場があるうちに、自分の目で見る
外壁は足場が外れると近くで見られません。足場があるうちに一度上って見せてもらってください。断る会社はまずありません。
専門知識はいりません。コーキングがまっすぐ通っているか、ビスの位置が揃っているか、それだけで十分です。施主が見に来る現場は、自然と丁寧になります。これは正直な話です。
④職人に直接あいさつしておく
顔を合わせて一言かけてもらえるだけで、印象は変わります。人間なので。
私が自分の家を建てるなら
最後に、よく聞かれるので書いておきます。
会社同士の付き合いを抜きにして、純粋に一人の施主として選ぶなら、私は工務店に頼みます。
理由は2つです。
ひとつは値段です。
感覚で言っているだけでは説得力がないので、記事を書くにあたって調べ直しました。一般に、工務店のほうが坪単価は安い傾向にあります。
- 大手ハウスメーカーの坪単価は70万円前後が目安
- 工務店との差は坪あたり20〜50万円程度
- 建物全体では数百万円、条件によっては1,000万円以上の差が出ることもある
よく言われる理由は、広告宣伝費・研究開発費・モデルハウスの維持費・本社の人件費です。大手はこれらが価格に乗ります。
ただし「大手は無駄に高い」という話ではありません。ここは正直に書いておきます。大手の価格には、長期保証やアフターサービス、実験にもとづいた部材の性能も含まれています。安いか高いかではなく、何が含まれているかが違うというのが実際のところです。
それを分かったうえで、私は建物そのものにお金を回したいと思います。保証も大事ですが、そもそも丁寧に作られていれば、直す機会自体が減ります。
坪単価を比べるときの注意点もひとつ。坪単価に何が含まれているかは会社ごとに違います。付帯工事や諸費用が別だと、あとから数百万円乗ります。坪単価ではなく、総額で比べてください。
もうひとつが本音の部分です。ゆっくりでいいから、しっかり作ってほしい。
工期に追われている建物を現場で見ると、正直、可哀想だなと思います。悪い家になるという意味ではありません。ただ、もう少し時間があれば、もっと良くなったのにという家が確かにあります。
高い買い物です。何十年も住みます。妥協せずに、満足して住みたい。自分の家なら、時間をかけてもらう側を選びます。
まとめ
もう一度整理します。
- 外壁を張る職人は、ハウスメーカーでも工務店でも同じ人のことが多い
- 差が出るのはその現場にどの職人が回されたかと、時間があったかどうか
- 職人の割り振りは、ごまかしが利かない現場かどうかでも変わる
- 注文住宅は工期を伸ばしてでも守る。分譲住宅は棟数に人が追いつかないことがある
- 荒くなるのは仕上げの美しさや細部で、雨仕舞いなど家が持つかどうかの部分は押さえる
- ハウスメーカーは仕組みが強い。工務店は融通が利き、細かく見てくれる
会社の看板より、その現場に時間と人が足りているか。ここを見てください。
そして一番効くのは、施主さんが現場に足を運ぶことです。私たちも人間なので、見てくれている家は自然と丁寧になります。恥ずかしい話かもしれませんが、それが現場の本当のところです。
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この記事を書いた人:新築外壁施工歴16年の職人。ALCとサイディングを専門に、年間180棟以上の現場で施工管理を担当。
