窯業系サイディングと金属サイディング。
性能や見た目の比較は、いろいろなところで読めます。でも「張る側から見てどう違うか」は、あまり書かれていません。
施工歴16年、両方を張ってきた立場から、現場での違いを書きます。
施主さんに直接関係のない話も出てきますが、材料の性格が分かると思います。
切るとき
まず、切る作業から。
刃が違います
同じ丸鋸でも、刃が違います。
- 窯業系:ダイヤのチップが付いた刃
- 金属:金属を切る専用の刃
素材が違うので、当然と言えば当然です。
粉じんの量が、まるで違う
ここははっきり差が出ます。
窯業系は、粉じんがたくさん出ます。
セメント質の板を切るので、白い粉が大量に舞います。集塵機を使っていても、完全には防げません。
金属は、粉じんが全然出ません。
この差は大きいです。近隣への配慮という意味でも、自分の身体という意味でも。
ただし、金属には別の注意があります
粉じんが出ないから安心かというと、そうでもありません。
金属を切ったときの細かい粉が、水切りに付着すると錆びることがあります。
水切りは外壁の一番下にある金属の部材です。そこに切りくずが乗ったまま放置されると、そこから錆が出る。
だから、水切りの近くで切らない。あるいは、切ったら片付ける。ここは気をつけている部分です。
以前「引き渡し前に水切りを見てください」と書きましたが、こういう理由もあります。
切った感覚の違い
刃が新しいかどうかで変わるので一概には言えませんが、傾向としてはこうです。
窯業系は、刃が減ってくるとどんどん切りづらくなります。手応えが重くなっていく。
金属は、軽く切れます。ただ、硬いものを切っている感覚があります。すっと入るけれど、素材の硬さは手に伝わってくる。
重さ
ここが一番の違いかもしれません。
重さは全然違います。金属は本当に軽い。
体の楽さが違います
外壁材は、一枚一枚を手で運んで、上にあげていきます。
その一枚が軽いというのは、一日の終わりに全然違うんです。
正直に書きます。
金属をやったあとだと、もう窯業系はやりたくなくなります。
それくらい差があります。
家にとってもいい
これは施主さんに関係のある話です。
軽いということは、家に重さがかからないということです。
外壁は家の全周に張るものなので、その総重量は相当なものになります。軽い方が建物への負担が少ない。地震のときのことを考えても、軽い方がいいです。
職人が楽だから、というだけの話ではありません。
一日に張れる量
「どっちが早いですか」とよく聞かれます。
正確に比べて数えたことはないのですが、トータルするとあまり変わらないと思います。
ただ、進み方の性格が違います。
窯業系:準備が軽く、本番に集中できる
窯業系は、一番下のスターターさえ付けてしまえば、あとはすぐ張れます。
スターターというのは、最初の一段目を張るときに使う部材です。これが付けば、あとは上に積んでいくだけ。
そこから先は、壁にだけ集中すればいい。淡々と進みます。
金属:準備に時間がかかる、始まれば楽
金属は逆です。
張り始めるまでの準備に、時間がかかります。
何をしているかというと、受けの部材を先に取り付けていく作業です。
- サッシまわり
- 張り出しのスタート部分
- 張り終わりの部分
こういった箇所に、板を受けるための部材を先に付けておく必要があります。これが手間です。
でも、その準備さえ終わってしまえば、あとは楽に進みます。軽いので、作業自体はスムーズです。
だから、トータルでは変わらない
- 窯業系=準備は楽、本番は大変
- 金属=準備は大変、本番は楽
最終的に、同じくらいに落ち着きます。
気の使い方は、どちらも同じです
「どっちの方が神経を使いますか」と聞かれたら、答えはこうです。
どっちも平等に気を使います。
傷の直り方は違いますが
前に書いたとおり、傷が付いたときの話は違います。
- 金属:補修しても分かってしまう
- 窯業系:補修すればある程度分からなくなる
でも、これは直せるかどうかの話であって、気を使うかどうかの話ではありません。
どちらも仕上げ材です。張ったらそれが家の外観になる。だから、同じように気を使います。
「窯業系は直せるから雑でいい」ということには、絶対になりません。
まとめ
| 項目 | 窯業系 | 金属 |
|---|---|---|
| 刃 | ダイヤチップ | 金属用 |
| 粉じん | たくさん出る | ほぼ出ない |
| 注意点 | 粉じん対策 | 切りくずが水切りに付くと錆びる |
| 切る感覚 | 刃が減ると重くなる | 軽く切れるが硬い感触 |
| 重さ | 重い | 本当に軽い |
| 進み方 | 準備が軽く、本番に集中 | 準備が重く、始まれば楽 |
| 気の使い方 | どちらも同じ | どちらも同じ |
施主さんにとって、何の意味があるか
ここまで職人の話をしてきましたが、ひとつだけ持ち帰ってほしいことがあります。
金属サイディングは、家にとって軽い。
これは施工のしやすさとは別に、建物への負担という実利があります。地震の多い国で、外壁が軽いというのは意味のあることです。
もうひとつ。
どちらを選んでも、張る側の気の使い方は変わりません。
「安い材料だから雑にやる」ということはない、というのは、知っておいてもらっていいと思います。
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この記事を書いた人:新築外壁施工歴16年の職人。ALCとサイディングを専門に、年間180棟以上の現場で施工管理を担当。

