前回の記事で、ニチハのフュージェ(Fu-ge)を「ニチハにしかない強み」として挙げました。
説明が数行だけだったので、今回は詳しく書きます。
施工歴16年の外壁職人として、実際に張った実感を書きます。いい製品だと思っていますが、注意してほしい点もあります。そこも隠さずに書きます。
フュージェとは何か
窯業系サイディングの製品です。特徴は2つあります。
① 四方合いじゃくり=シーリングレス
板の四方が噛み合う構造になっています。これによって、左右の接合部にシーリング目地が入りません。
普通の窯業系サイディングは、板と板の継ぎ目をコーキングで埋めます。フュージェにはそれが要らない。
② 六尺板
板の長さが六尺(約1,820mm)です。一般的な九尺(約2,730mm)より短い。
この2つが、フュージェの性格をほぼ決めています。
張ってみた実感
軽くて、持ち運びやすい
六尺なので軽いです。持ち運びやすい。
前回の記事で「ニチハは本当に重い」と書きましたが、フュージェは別です。重いことは重いのですが、九尺に比べれば軽い。
板の反りがない
これも大きいです。
九尺ではないので、板の反りがありません。
長い板ほど反りが出やすいので、六尺だとその問題が起きにくい。ニチハの九尺板で感じる「反っていて納めにくい」がありません。
枚数は増えますが、問題ありません
六尺なので、同じ面積を張るのに枚数は増えます。
ただ、張りやすさという点では問題ないです。一枚が軽くて扱いやすいので、枚数が増えても苦になりません。
仕上がりは、いいです
シーリングレスの仕上がりは、いいと思います。
継ぎ目は突きつけになるので、あまり目立ちません。板と板が自然につながって見えます。
コーキングがないことの価値
以前「割り付け」の記事で、こう書きました。
ジョイント部分にはコーキングが入る。そしてコーキングは時間が経つと汚れる。だから継ぎ目の線が、10年後に浮き出て見えてくる。
フュージェは、この問題が起きません。
ただし、「コーキングゼロ」ではありません
ここは正確に書いておきます。
「シーリングレス」といっても、コーキングが一切なくなるわけではありません。
出隅の取り合いには、コーキングを打つ場合が多いです。四方合いじゃくりで納める出隅部材もあるのですが、施工のしやすさから、そこだけコーキングが入る現場も多いのが実際です。
私は、出隅も合いじゃくりがいいと思っています
個人的な意見を言えば——出隅も四方合いじゃくりで納める方がいいと思っています。
理由は単純で、コーキングは汚れ始めると目立つからです。
せっかく他の継ぎ目にコーキングがないのに、出隅の縦のラインだけ汚れてくると、そこが余計に目立ってしまいます。他がきれいなぶん、差が出る。
やる側としては、すごく大変です。それでも、仕上がりを考えるとこちらがいいと思っています。
ただし、難しさはあります
いいことばかり書きましたが、張る側から見ると難しい製品です。
コーキングで逃げられません
張りも加工も、きれいにやらないといけません。
普通のサイディングなら、多少のズレはコーキングが吸収してくれます。でもフュージェは突きつけです。
少しのズレが、そのまま見えてしまいます。
ずっと気を使います
だから、張っている間じゅう気を使います。正直、大変です。
寸法を取るときも、切るときも、納めるときも。「まあいいか」が効かない。
これは前に書いた「下屋の取り合いはコーキングを打たないから、ごまかしが効かない」という話と同じです。隠せない納まりは、精度がそのまま出ます。
注意してほしいこと:吐き出し窓の上
ここが、この記事で一番書いておきたいところです。
六尺割りだと、窓の上にジョイントが来ます
フュージェは六尺で割り付けていきます。
そうすると——吐き出し窓(掃き出し窓)がある場合、その上にジョイントが来てしまうことがあります。
これは、本来避けたい納まりです
以前「割り付け」の記事で書きました。
ジョイントを窓の上に持ってこない。窓の上はもともと雨が溜まりやすい場所です。そこに板の継ぎ目を持ってくると、弱い場所が重なることになります。
フュージェの六尺割りでは、それが避けられないことがある。
雨漏りの報告を聞いたことがあります
正直に書きます。
この部分からの雨漏りの話を、聞いたことがあります。
ただし、これについてははっきりしないことが多いので、断定はしません。
- 製品そのものの問題なのか
- 納まりや施工方法の問題なのか
- 条件が重なったときだけなのか
私には判断できません。聞いたことがある、というだけです。
ただ、対策はあります
そして、ここが大事なところです。
張る前に、サッシと吐き出しの部分にコーキングを打っておく。
これをやれば、問題なくなると思っています。ひと手間かかりますが、それだけです。
「シーリングレスだからコーキングは一切不要」ではありません。張る前の下地の段階で、必要なところには打っておく。そういう仕事です。
施主さんへ
フュージェを検討している方に、伝えたいことは2つです。
① いい製品だと思います
コーキングが減るというのは、10年後、20年後に効いてくる話です。
- 継ぎ目が目立たない
- コーキングの黒ずみが出ない
- 将来の打ち替えが減る
これは見た目の話だけでなく、メンテナンスコストの話でもあります。
② 吐き出し窓の上を、聞いてみてください
契約前でも、工事前でも構いません。業者にこう聞いてみてください。
「吐き出し窓の上にジョイントが来る場合、どう納めますか」
これに答えられる業者なら、たぶん大丈夫です。「張る前にコーキングを打っておきます」という答えが返ってくれば、なおいい。
逆に、質問の意味が通じない相手だったら——少し気をつけた方がいいかもしれません。
まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 構造 | 四方合いじゃくりでシーリングレス。六尺板 |
| 出隅 | 施工のしやすさから、コーキングを打つ現場が多い |
| 重さ | 六尺なので軽い。ニチハの九尺板より扱いやすい |
| 反り | ない(九尺ではないので) |
| 仕上がり | いい。突きつけで継ぎ目が目立たない |
| 難しさ | コーキングで逃げられない。ずっと気を使う |
| 注意点 | 吐き出し窓の上にジョイントが来ることがある |
| 対策 | 張る前にサッシと吐き出しにコーキングを打つ |
いい製品です。張るのは大変ですが、仕上がりも将来のメンテナンスも、いい方向に効きます。
そのうえで、弱点も知っておいてください。対策できることなので、知っていれば怖くありません。
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この記事を書いた人:新築外壁施工歴16年の職人。ALCとサイディングを専門に、年間180棟以上の現場で施工管理を担当。