外壁材のメーカーは、たくさんあります。
窯業系サイディングならニチハ、ケイミュー、旭トステム。金属系ならアイジー工業、ニチハ、ケイミュー。
でも——ALCは3社しかありません。
施工歴16年、ALCとサイディングを専門にやってきた職人として、この3社の話を書きます。
先に正直に言っておくと、3社のうち1社は、私は一度も使ったことがありません。そこは評価できないので、そう書きます。
もうひとつ。今の私はサイディングが中心で、ALCは手伝いで入る程度です。ただ、離れた頃から施工の仕方も製品も変わっていません。だからここに書くことは、今も通用すると思っています。
ALCのメーカーは、この3社です
ALC協会に載っているのは、次の3社だけです。
| メーカー | 製品名 |
| 旭化成建材 | ヘーベル(木造用はヘーベルパワーボード) |
| ケイミューシポレックス | シポレックス(木造用はスーパーボード) |
| クリオン | クリオン |
サイディングに比べると、圧倒的に選択肢が少ない。これがALCの一つ目の特徴です。
シポレックスは、今はケイミューの会社です
ここは知らない方が多いと思うので、先に書いておきます。
シポレックスは、以前は「住友金属鉱山シポレックス株式会社」でした。
それが2024年、住友金属鉱山がケイミューに全株式を譲渡して、「ケイミューシポレックス株式会社」になりました。
これは、けっこう大きい話です
ケイミューはもともと、窯業系サイディングの大手です。光セラを作っている会社ですね。金属サイディングの「はる・一番」も持っています。
そこにALCが加わった。つまり——
ケイミューは今、窯業系・金属系・ALCの3種類すべてを持っていることになります。
外壁材メーカーとしては、かなり珍しい形です。職人としても「そうなったのか」と思いました。
私が張っているのは、ダントツで旭化成です
ここからは現場の話です。
張っているのは、ダントツで旭化成(ヘーベル)です。
シポレックスは、何回か
シポレックスは何回か使ったことがある、という程度です。数えるほどです。
クリオンは、一度もありません
クリオンは、一回も使ったことがありません。
だから、クリオンについては何も言えません。良いとも悪いとも書けない。使っていないものを評価するのは、不誠実だと思うので、そこは空欄にしておきます。
割合は、分かりません
「3社のシェアはどのくらいか」——これは調べてみましたが、3社とも数字を公表していませんでした。
私の周りで旭化成が多いのは事実ですが、それが全国の傾向なのか、地域や取引先の事情なのかは分かりません。私の見ている範囲の話として読んでください。
張ってみて、はっきり違ったこと
シポレックスと旭化成、両方張った実感として、一つはっきり違いを感じたことがあります。
中に入っているものが違います
旭化成は、板の中にラス網が入っています。
シポレックスは、鉄筋が入っていたと思います。
これは調べたら、メーカーの説明とも合っていました。旭化成の公式サイトにはこう書いてあります。
ALCパネルの内部には、補強材として防錆処理を施した鉄筋マットやメタルラスが組み込まれています
「メタルラス」というのが、現場で言うラス網のことです。一方シポレックスの説明は「パネル内部に補強鉄筋」となっています。
結果、切りやすさが違います
シポレックスの方が、切りづらかったです。
理由ははっきりしていて、鉄筋の方が太いからだと思います。細い網より、太い鉄筋の方が刃に当たったときに苦労する。
ALCは現場で寸法に合わせて切ります。その作業が一日に何回もあるので、この差は地味に効いてきます。
精度は、正直どこも良くありません
ここは正直に書きます。
精度は、どのメーカーもそんなには良くはないです。
以前ニチハの記事で「矩(かね)が悪い」と書きましたが、ALCはそれ以前の話です。
サイディングの方が、全然いいです。精度でいえば比較になりません。
表面の肌には、差がありません
ちなみに、塗装する前の表面の状態については、メーカー間の差は感じません。ここはどこも同じです。
ALCは塗装が前提の材料なので、下地としての肌が気になるところですが、そこでメーカーを選ぶ理由にはならないと思います。
でも、ALCの方が気にせず貼っていけます
ここが、この記事で一番書きたいところです。
精度は悪い。でも、貼るのはALCの方が楽です。
矛盾しているようですが、理由があります。
① ハットジョイナーがありません
サイディングは、ハットジョイナーにきっちりくっつけながら貼っていきます。ジョイント部分に入る金物ですね。
ここに合わせて貼るので、逃げがありません。切り口をごまかすにも限度があります。
ALCには、ハットがありません。だからずらして貼ったり、削ったりできます。
② クリア(隙間)を多めに取ります
ALCはクリアを多めに空けます。そのぶん逃げがあるんです。
寸法がぴったりでなくても、隙間で調整できる。サイディングではこうはいきません。
③ 最後にコーキングと塗装が入ります
そして一番大きいのがこれです。
張り終わったあとに、コーキングと塗装が入ります。
つまり、多少施工が荒くても目立たないということです。目地はコーキングで埋まり、その上から塗装で全部おおわれる。
サイディングは違います。貼った時点で完成品です。表面がそのまま仕上がりになるので、ズレがあればそのまま見えてしまう。
④ やることが、そもそも少ない
もう一つ。ALCは作業の種類が少ないです。
サイディングは、細々とやることが多い。
- 出角を立てる
- パッキンをつける
- ジョイナーを入れる
- 役物を納める
こういう作業が次々にあります。ALCはそれがない。単純に手数が違います。
誤解しないでほしいこと
念のために書いておきます。
そんなひどい施工は、基本しません。
「荒くてもいい」という話ではありません。サイディングと比べたときに、言い方は悪いですが、きっちり貼らなくても成立する——そういう性格の材料だ、ということです。
きちんとやる人は、ALCでもきちんとやります。ただ、逃げがある分だけ、差が出にくいとは言えると思います。
木造は、ほぼ37mmです
厚みの話もしておきます。
木造は、ほぼ37mmです。
ALC協会の規格でも、こうなっています。
- 厚さ35・37mm → 主に木造
- 厚さ50mm → 鉄骨造、木造
- 厚さ75mm以上(厚形)→ 鉄骨造、鉄筋コンクリート造
50mmも木造で使えることにはなっています。ただ——今、50mmを貼っている木造は、まず見ません。
よほど施主さんが「貼りたい」と言わない限り、37mmになると思います。
施主さんへ:メーカーで悩む必要は、たぶんありません
最後に、正直な意見を書きます。
ALCのメーカーを、施主さんが選べる場面は少ないと思います。
これは確かなことではありません。ただ、基本は旭化成になるんじゃないかというのが私の感覚です。ハウスメーカーや工務店の取引の都合で決まっている部分が大きいはずです。
それより、気にしてほしいことがあります
ALCで本当に大事なのは、メーカーではありません。
塗装です。
ALCはそれ自体に防水性がありません。
守るものがなければ、どんどん水を吸って、重くなってしまいます。気泡の入った材料なので、水はいくらでも入っていく。
つまりALCは、表面の塗装で守っている材料です。だから塗料のグレードと、塗り替えのタイミングが、そのまま寿命を決めます。
メーカーで悩む時間があったら、「どの塗料を使いますか」「何年で塗り替えが必要ですか」を聞いてください。そっちの方が、10年後20年後に効いてきます。
まとめ
| 項目 | 内容 |
| メーカー | 3社だけ(旭化成建材・ケイミューシポレックス・クリオン) |
| シポレックス | 2024年にケイミュー傘下へ。ケイミューは3種類すべてを持つ会社に |
| 私の経験 | 旭化成がダントツ。シポレックスは数回。クリオンは未経験 |
| 中身の違い | 旭化成はラス網、シポレックスは鉄筋。シポレックスの方が切りづらい |
| 精度 | どこも良くない。サイディングの方が全然いい |
| でも貼りやすい | ハットがない・クリアに逃げがある・最後にコーキングと塗装が入る・やることが少ない |
| 厚み | 木造はほぼ37mm |
| 選ぶ基準 | メーカーより塗装 |
ALCは、メーカーの違いで悩む材料ではないと思います。
選択肢が3社しかなくて、しかもたぶん選べない。だったら、そこで悩むより、塗装の話をした方がいい。
そういう材料です。
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この記事を書いた人:新築外壁施工歴16年の職人。ALCとサイディングを専門に、年間180棟以上の現場で施工管理を担当。クリオン製品の施工経験はありません。
